聞き手:Sae Kikuchi、Yuyu Koizumi
執筆:Sae Kikuchi
カメラ:Tsuyoshi Endo
MATSURIの開催までいよいよ1カ月となりました! 去年の盛況に続き、益々盛り上がっていけたらなと感じています。さて、我々プロモーションチームではMATSURIについて色々な人の「想い」を聞くべく、インタビューを決行することになりました。
第一弾は在シドニー日本国総領事の竹若敬三氏!
昨年シドニーに総領事として着任された竹若氏は、これまでに様々な経歴を持つお方。
アジア大洋州局、国際情報局、経済局での職務を経て、在イタリア日本国大使館・参事官に続き、在インド日本国大使館・経済公使に。続いて在フィリピン日本国大使館・政務公使として務められた後、同総領事兼次席公使となり、さらに国際協力機構(JICA)総務部長、国際協力局地球規模課題担当審議官としてNGO担当大使、世界エイズ・結核・マラリア対策基金理事を務められ、2016年、在シドニー日本国総領事に赴任されました。
シドニーの魅力とは?世界に日本を発信していく意味とは?
多様な経験を持つ竹若氏の視点から沢山の興味深いお話を聞かせて頂きました!!
祭り編集部: シドニーには2016年に赴任されたとのことですが、9カ月過ごされてシドニーの感想はいかがですか?
竹若総領事(以下、竹若):非常に綺麗で暮らしやすい街です。綺麗な空気と綺麗な水に、安全。そして日本からの飛行時間があまり長くなく、時差もほとんどないということは、日本人にとってメリットと言えると思います。
また、シドニーはいろいろなバックグラウンドを持つ人たちが集まっており、マルチカルチュアリズム=多文化主義が大変発展していると感じます。
どういった点で多文化主義が進んでいると感じますか?
竹若:シドニーには245のいろいろな民族出身の人々が来ています。そういった人が争わずに平和に暮らしていく、違いを乗り越えて調和、ハーモニーを達成するための役所があり、多文化主義担当大臣がいるのですが、何か政策として催しを行う時など、必ずその大臣が出席します。必ずそういうところに顔を出し、いろいろな国の文化に染まろうと努力する様子が伝わってきます。まさにプロですね。
「多文化主義担当大臣」がいるなんて知りませんでした…!そういう小さい積み重ねが、シドニーのマルチカルチュアリズムを育てて来たのですね!色んな国でご活躍されてきた竹若総領事ですが、これまでの赴任先でもMATSURIのような日本人と現地の人との交流があるようなイベントはありましたか?
竹若:結論から言うとシドニーが一番大きいと思いますが、マニラに赴任していた際、日本人学校のイベントとして、学校の校庭に屋台を出したり、盆踊りや太鼓等を一緒にやったりする催しはありましたね。日本人と現地の人とが一緒に集まる機会があるというのは、盛り上がります。
2016年のシドニーの祭りをご覧になられて、実際どう感じられましたか?
竹若:私のこれまでの海外勤務の中でシドニーの祭りは最大ですね。本当に圧巻でした。
ありがとうございます!日本のイベントであるMATSURIがシドニーでそんなに盛り上がるのも、オーストラリア社会の『多文化の受け入れ』という面が大きく影響しているのでしょうか。
竹若:多文化の力というのもあると思いますが、みんな日本が好きなんですね。
日本の何が具体的に好きなのでしょうか
竹若:侍、太鼓、着物、生け花、書道、将棋。飲食という面でも日本のお酒やビールはやはり人気ですね。また、私たち日本人自身が気づいていない魅力というのもあるでしょう。我々自身も日本のことを実はよくわかってないことがあります。外国人に聞かれて初めて「アレッ、勉強しなきゃいけない」ということもあります。たとえば「関ヶ原の戦いの意味は何か?」を聞かれます。これを外国人にうまく説明するのはなかなかできないものです。
それから、『キッザニア』は外国人からも人気があるスポットのようですが、これも私、オーストラリア人から聞ききました。水曜日の『キッザニア』はイングリッシュオンリーという時間があるそうで、この時間はスタッフがイングリッシュオンリーで接してくれるから外国人の方も楽しめるそうですよ。
知りませんでした!
竹若:「定番」はもちろん、なにをどういう風に宣伝していくか。日本が持つ可能性を活かし、もっと広がりを持てたら良いですよね。
文化的な交流の大切さについてお伺いしたいと思います。総領事の「日本と外国を繋げたい」という気持ちはどこからくるのでしょうか。
竹若:日本というのは、国のあり方として平和的な考え方を持っていますし、現在の国際情勢においては、まさにそれを打ち出して世界的な平和を達成していく必要があると思います。日本の社会の在り方等を考えていくと、地球の人口を70億として、日本人は1億。70分の1しかいないと。しかも高齢化していく中にあって、どうしたら日本を打ち出していけるか、盛り上げていけるかと。その答えは「絆を強くしていくこと、友達を増やしていくこと」だと思うのです。
素敵なお考えです。
竹若:オーストラリアにきてそういう考え方はますます強くなりました。こちらに来てから、小さい姉妹都市同士の交流にも着目するようにしています。例えば、ウーロンゴンと川崎市(神奈川県)、リズモアと大和高田市(奈良県)など、ずっと長く続いています。50年以上交流が続いているところもあります。
継続は力なり。”Persistence pays off.” 要するに、人間関係が強くなるんですね。親戚とはいいませんけど、一種の仲間だという意識がずっと長く続いていく。これは大事なことだと感じます。そしてそれはあまり大きい規模でやるよりも、小さい規模で理解しあった方が長く続いていく。現実にそういう交流が効果を上げているというのはいろいろなところでみられます。小さい規模での繋がりが国同士の繋がりをさらに強くしていくというわけです。
交流というのは一種の投資であり、その効果というのはとても大きいです。若いときの経験や知識というのは後々いろいろ生きていきます。たとえば、シドニーで過ごす若者の1カ月間と、私がここで過ごす1カ月は全然ちがう。そういう意味で若者に対する交流の重要性というのはとても大きいと思います。
より多くのオーストラリア人を呼び寄せ、日本に対する興味を持ってもらうにはどうしたらいいでしょうか。
竹若:オーストラリアについて言えば、一般に日本への関心は既に高いと思いますよ。ただ、オーストラリアの人というのは本物思考が強いというか、こだわりがある人達ですから、和食といっても偽物じゃなくて「本物が食べたい!」という人が多いかなと思います。
単なる当たり障りのないことでなく、我々にとって大事なのは日本の深い価値観まで伝え、リピーターになって頂くことですね。出来上がったものではなく、作業過程なども見せられたら良いと思いますよ。
生け花を生けている姿とか、お茶を点てている姿とか。例えば、書道で言えば、あれはただ文字を書くという以上に一種の精神統一なんですよね。ただ文化を紹介するというところからもうワンステップアップして、そういった日本の精神的なものや、深みを見せ、伝えていくことが大事なんじゃないでしょうか。
そうですね。MATSURIでそういうイメージを与え、それをきっかけに日本への興味をより深めてもらう。その場で楽しいというだけじゃなく、なにかきっかけを与えられるような、心に残るイベントにできればと思います。
竹若:リピーターになってもらうにはやはり深みを伝えていく必要があります。「また来年もやってほしい!」と言ってもらえると良いですね。
そしてオーストラリア人はスポーツが本当に大好きですから。日本により興味を持ってもらい、2020年の東京オリンピックにも多くの人が来てくれるといいですね。
我々はみんな日本の営業をしている日本代表です。そしてそれは私のようなものがやる以上に、若い人たちが日本をもっとアピールしていく。若者がもっと輝いていく、そういう世界が大事じゃないかなと思います。
祭りをこうやって毎年続けていくことにも意味があると思って頂けますか。
竹若:はい。万単位で人が来るというのは凄いことだと思いますよ。間違いなくシドニーの一大イベントであり、誇りを持って良いと思います。それと同時にまだまだ伸びしろもあると思いますよ!
ちなみに、オーストラリアと日本の間に何か課題はありますか。
竹若:まだまだ我々日本人がオーストラリアのことをわかっていないと感じます。ある大学の先生がおっしゃっていたのですが、日本の書店にはオーストラリアの本が数冊しかないと。まだまだ日本が、オーストラリアがいかに大事で重要な国であるかを理解しておらず、それはある意味勿体ないと感じます。この地域にこれだけ日本のことが好きな国があるというのは凄く大事なことです。オーストラリアで日本をアピールすると同時に、日本に対してオーストラリアを宣伝する必要があるかなと思います。
最後にMATSURIのボランティアにメッセージをお願いします。
竹若:一緒に盛り上げましょう!!!間違いなく、日本の評判は良いと思ってもらってよいです。
総領事に後押しして頂いて、私達も心強いです。
竹若:オーストラリア人の信頼に応えて、ますます高いレベルの評判を頂けるとよいですね。
最後に、竹若総領事にとって祭りとは?
竹若:熱くなるものですかね。
みんなが熱くなれるようなMATSURIにしたいと思います!
今回のインタビューは在シドニー日本国総領事の竹若敬三氏でした!
竹若総領事にMATSURIについて、さらには人生についてまで(笑)背中を押して頂きとても心強く感じました。日本の深みを伝え、日豪のより良い関係を築けるようなイベントにすべく、MATSURIスタッフ一同頑張っていきたいと思います。
改めて、お忙しいなか沢山の貴重なお話を聞かせて頂きありがとうございました!
祭りウェブ 編集チーム
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